四周年記念座談会『フェイト/スペリオル』
イリスフィール(以下イリス)「いつもこのブログに来てくださる皆さん、お久しぶり〜!」
フィアリスフォール(以下フィアリス)「今回はわし、フィアリスフォールとイリスフィール、そして」
シリウス「俺、シリウス・フィッツマイヤーは進行役に徹し、ちょっと『テーブルトークRPG』(以下T・RPG)ってもんをやってみちゃうぞ! 名づけて『フェイト/スペリオル』!」
イリス「まあ、私たちが進行役をやる以上、ただの『T・RPG』にするつもりはないんだけどね」
フィアリス「うむ! ちなみに、参加者はこの七人じゃ!」
スピカ「ちょっと、お兄様! こんなところにムリヤリ連れてきて一体なんのつもりですの!?」
九恵「ここに来るまでも散々同じことを叫んでたんだから、いい加減、少しは落ち着きなさいよ。……で、ここに来る途中に正門にあった名前は確か、『彩桜学園』だったかしら?」
シリウス「イエース! ザッツライト! 九恵ちゃん大正解〜! ちなみに、ここは学園の奥にある礼拝堂な?」
九恵「あなたもあなたで、妹とは別の方向性でテンション高いわね。さすがは兄妹、といったところかしら?」
フィアリス「いや、単にイリスフィールと会えてテンションがマックスになっとるだけじゃろう」
シリウス「イエース! ザッツライト!」
フィアリス「…………。まあ、それはそれとして、じゃ。ほれ、お主たちもなんかしゃべるがよい。いつまで黙りこくっているつもりじゃ」
詩織「あはは……。いえ、なんかテンションがこちらのメンバーとは違いすぎて……」
美鈴「あれについていけるのは、うちの部長――深空くらいのものだろうな。それはそれとして、大方の予想はついていたと思うが、『彩桜学園』が舞台ということで、私たちにも声がかかったわけだ」
大河「しかし、彩桜の生徒だからって、馴染みのない新キャラまで呼ぶってのはどうなんだろうな?」
守「兄貴はまだいいさ。僕なんか本当にチョイ役だったんだぞ? 憶えてくれている人、ちゃんといるのか?」
千夏「あははっ。むしろ、新キャラで馴染みが薄いからこそ呼ばれたんじゃない?」
フィリアス「ふむ、千夏は鋭いのう。まったくもってその通りじゃ」
詩織「ああ、だから藤島さんとかは呼ばれてないんですね。あと、うちの部長も」
フィアリス「そういうことじゃ。深空は印象に強く残っておるじゃろうからな。――で、じゃ。今回の『T・RPG』、参加者――もとい、マスターはスピカ・フィッツマイヤー、九樹宮九恵、広世大河、広世守、岡本千夏、西川詩織、国本美鈴の七人――」
七人『マスターってなに!?』
シリウス「い〜い質問だ。キミたちにはこれから、この学園で『七つの世界を翔ける杯(カーツア・アーク)』争奪戦――名づけて『聖杯戦争』をやってもらおうと思う。それも、敗北イコール死という『てい』で、ね」
詩織「『てい』で、なんですね……」
フィアリス「まあ、そう苦笑するな、詩織。『T・RPG』であり、座談会の中でやるんじゃから、本当に死ぬことにはならんとすぐわかるじゃろう? でなければ『本編』に支障が出る」
九恵「ごもっともね。まあ、緊張感は薄いにも程があるけど」
守「でもよぉ、争奪戦っていっても、一体なにをするんだ? 自慢じゃないけど僕、ケンカ弱いぞ?」
スピカ「え、その若干乱暴ともとれる口調でありながら、弱いんですの?」
守「うっせぇ!」
九恵「でも実際、この七人でやったら私とフィッツマイヤーさんが二強ということになるわよね」
詩織「勝てる自信、ゼロです……」
千夏「活発なのとケンカ強いのとは別だしね」
大河「まあ、男女の差というものもあるから、ガチのケンカとなれば、また変わってくるのかもしれないけど……」
美鈴「それは、女という生き物を甘く見すぎてはいないか?」
大河「す、すごまないでくださいよ……」
シリウス「はい、ストップストップ。キミたちねぇ、ちょっと血の気が多すぎだよ。俺たちはなにも、ガチで殴り合えなんて言ってないだろう?」
イリス「このゲームの目的は『七つの世界を翔ける杯(カーツア・アーク)』を見つけだすこと。必ずしも戦わなきゃいけない、なんてことはないのよ」
フィリアス「いや、それは言いすぎじゃろう、イリスフィール。どうしたって戦闘は起ころうよ。しかしじゃな、戦うのはお主たちではない。『杯』の力とお主らの内にある魔力とによって呼び出された従者――サーヴァントたちが矛を交えるのじゃ。で、自分のサーヴァントが負けるようなことがあれば敗北、即座に退場じゃ。これは『てい』ではないぞ? 本当に戦うのじゃ。サイコロを振って勝敗を決める、なんて温(ぬる)いバトルではなく、な。もちろん、学園内での探索も実際に自分たちの足でやってもらう。これが、ただの『T・RPG』ではないゆえんじゃな」
九恵「というか、もはや『T・RPG』じゃないわね、それだと」
イリス「ま、まあね。あはは……。でも、これなら少しは緊張感も出るってものでしょ?」
九恵「まあ、それは確かにそうだけど……」
スピカ「あの、サーヴァントが代わりに戦うということは、つまり、わたくしたちはそれを見ているだけですの?」
フィアリス「いや、もちろん戦闘に介入することもできる。じゃからスピカと九恵が優位というのは変わらんの」
イリス「と言っても、そこは戦術やサーヴァントとの信頼関係で埋められるから心配しないで。あ、ココノエたちはもちろん、油断しないようにね」
九恵「多少の緊張感はあるといっても、たかがゲームなんだから、油断もなにも――」
シリウス「たかがゲーム、されどゲームだよ、九恵ちゃん!」
九恵「はいはい……」
シリウス「それと、サーヴァントにも能力的に見てアタリハズレがあるからね、そのあたりはまさに運しだい!」
イリス「じゃあ皆。サーヴァントを召喚する前に、これを」
大河「これって……折りたたみ式のケータイ?」
イリス「形は似てるけど不正解。それは携帯端末機よ。各サーヴァントのステータスなどが表示されるの」
フィアリス「では説明も終わったことじゃし、早速――」
詩織「あ、ちょっといいでしょうか? あの、そういえば今回、『蒼き惑星(ラズライト)』の方たちはどうしたんですか? いまになって言うのもあれですが、私たちだけで座談会を進めても、大して面白くは――」
シリウス「なに、じきにやってくるさ。じきにね。じゃあ、召喚開始だ。まずは大河くんから!」
大河「あ、はい! ええと……ええと……。あの、なんといって呼べば?」
イリス「呼ぼう、という意思があれば召喚できるわよ。というかほら、もう来てる」
大河「え、もう!? 迫力に欠けるなぁ!」
???「もう、なによいきなり。……あ! ここ、座談会の会場!? あれ? でも、いつものところと違う……?」
――ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!
???「うわあっ! なに!?」
フィアリス「大河の携帯端末機が自サーヴァントの情報を取得したのじゃ。確認してみぃ」
大河「あ、うん。わかった。ええと、まず能力が『筋力B 耐久C+ 敏捷A+ 魔力A 幸運B+』か……」
イリス「能力値の優劣は『E<D<C<C+<B<B+<A<A+<EX』となっているわ」
大河「お、じゃあかなりのアタリ引いた?」
シリウス「そうかもしれないな。ちなみにクラスはなんだった?」
大河「クラス? ……あ、ここか。ええと、『ライダー』ってなってます」
フィアリス「機動力に優れたクラスじゃな。――と、召喚されたサーヴァントには特定のクラスが与えられる。そしてそのクラスは基本、七つ存在するのじゃ。マスターが七人いるように、な」
シリウス「そうだ、ここでちょっとアドバイスを。自サーヴァントとはなるべく親睦を深めておいたほうがいいぞ。これから一緒に戦っていくパートナーだからな。あ、携帯端末機でスキルなどの項目をチェックしておくのも大事だぞ」
大河「あの、でも……」
シリウス「ん? なんだい少年?」
大河「女の子、ですよね、あのサーヴァント。しかも僕より年下っぽい? ちゃんと戦えるんでしょうか。……って、なにため息ついてるんですか!?」
シリウス「いや、まさかサーヴァントのことを外見で計ろうとするとはね。あのさ、彼女はここよりもずっと争いごとが多い世界からやってきたんだ。当然、戦闘の経験も俺たちより遥かに多い。間違っても、自分が彼女を守らないと、みたいなことは考えないようにな」
大河「は、はぁ……。わかりました。じゃあ、自サーヴァント情報をチェック、と」
○大河のサーヴァント
クラス:ライダー
マスター:広世大河
真名:???
宝具:???
能力:筋力B 耐久C+ 敏捷A+ 魔力A 幸運B+
スキル
・騎乗〔C〕
生物・機械問わず、乗り物を乗りこなす能力。
これの能力が〔C〕の場合、せいぜい大人しい馬や自転車に乗れる程度。
ちなみに、この程度のランクでは本来、『ライダー』にはまずなれない。
・王族特権〔EX〕
王族として生まれた者のみが持つスキル。
これが〔EX〕である者は傍若無人な性格に育つ傾向があるが、かなりの無茶をも押し通してしまい、結果、国に革命をもたらすことすらあったりする。
また、サーヴァントとしての側面でなら、適正に満たないクラスであっても、そのクラスで召喚される場合がある。ただし、適正ゼロの場合は不可能。
・神性〔C〕
創造主に近き者のみが持つスキル。
修行の程度にもよるが、このスキルを持つ者はすべての『神界術』を使いこなすことができる。
彼女は本来、もっと高いランクを持ちうる存在であるのだが、その存在の『一部』であるため、現在はランクが〔C〕まで下がってしまっている。
それにより、すべての『神界術』を使いこなすことはできなくなっているのが現状。
・人物解説
騎兵のサーヴァント。
魔術――特に黒魔術を得意とし、素早い身のこなしによって敵を翻弄する戦い方に長けている。
また、やや非力ではあるがエアナイフを用いた近接戦闘も仕掛けることができる。
元いた世界では某王国の第二王女として生活していたためか、やや傍若無人かつ自信過剰な言動が目立つ。
本来、彼女は『ライダー』にはなれないのだが、スキル『王族特権〔EX〕』を用いて『ライダー』の適正不足を補った。
なお、『キャスター』や『バーサーカー』のクラスで召喚されることもある。
大河「……あれ? 『真名』と『宝具』の欄が『???』に……。なあ、これだとなんて呼べばいいのかもわからな――」
???「ああ、あたしのことは『ライダー』って呼んでくれればいいわよ。ほら、あなたにだけならまだしも、他のマスターや、ましてやこれから呼ばれてくる他のサーヴァントにあたしの真名がバレるのは好ましくないからね。あたしの得手不得手がバレる可能性もあるから」
シリウス「ちなみに、『真名』の欄は自サーヴァントが『宝具』を使ったときに自動で埋まるようになっているよ。『宝具』の名称には『真名』の一部が使われていることが多いからね」
イリス「まあ、まずはその『宝具』の名前を自サーヴァントから教えてもらわないといけないわけだけどね。――あ、もし他のマスターやサーヴァントに聞かれたくない話をするなら、あなたの右の手の甲に出ている『令呪』を使ってね。心の中で話せるから」
大河「了解。えっと……」
大河『……こうかな?』
ライダー『オッケー、聞こえる聞こえる。……で、なにか訊きたいことある?』
大河『とりあえず、やっぱり『宝具』の欄を埋めておきたいんだけど』
ライダー『ぐっ……。やっぱりそうくるかぁ。いいわよ、わかったわよ。あたしにとっては恥でしかない宝具名だけど、教えてあげるわよ。ええとね、み……』
大河『み?』
ライダー『み、『ミーティアちゃんのウルトラキック』……』
大河『そんな搾り出すようにして言わなくても……。というか、なんでキック?』
ライダー『なんか、『ライダーといったらキックでしょ』なんだって。あと、あたし、よく人を蹴っ飛ばすから……』
大河『ああー……。ああー……。なるほど、ライダーキック。それで……』
ライダー『な、なんかものすごい納得しまくってるわね。まあ、いいけど……』
イリス「さて、じゃあ他に質問ある人〜? なければ次の召喚にいくわよ?」
九恵「じゃあ、はい。令呪はマスターとサーヴァント間の連絡手段にしか使えないの?」
イリス「いえいえ、とんでもない。令呪はね、自サーヴァントをパワーアップさせたり、勝手な行動をしないよう強制したり、他にもとにかく、自サーヴァントに対してなら、相当の介入ができるのよ。でもそういった行動は『杯』からの力をすごく消費するから、行使できるのは三回までなの」
シリウス「もっとも、三回使った段階で令呪は消滅するからな。そして令呪の消滅はイコールでゲームからの脱落を意味する」
スピカ「ということは、なんですの? 使えるのは実質二回だけということに?」
シリウス「ま、そういうことだな。くれぐれも使うときは慎重に使えよ?」
詩織「あ、私からも質問、いいでしょうか?」
イリス「どうぞどうぞ」
詩織「サーヴァント同士がすでに知り合いだった場合、真名を隠しておけるものなのでしょうか? その、例えば、私と副部長のサーヴァントが兄弟だったりしたとしたら、どう考えても……」
フィアリス「外見だけで正体がバレるのでは、ということじゃな。じゃが、その心配は不要じゃ。この学園内にある『杯』の力を借りて、期間限定でわしが『とある魔術』を学園中にかけておるからな。その魔術に触れておる間、サーヴァントたちは召喚された直後に自分の役目・役割を正確に認識し、なおかつ親兄弟が敵サーヴァントとして召喚されておっても、外見のみではそうと気づけぬようにされておるのじゃ。もちろん『知識』はそのまま残されておるから、『宝具』を目の前で使われたり『真名』を耳にすれば、どのサーヴァントも敵がどこの誰であるか正確に特定できるであろう」
九恵「その自サーヴァントの『知識』にはない相手だったら?」
フィアリス「それは意味のない仮定じゃな。そんなことは今回に限っては起こり得ん。……そう、七組のマスターとサーヴァントたちのみが戦うのなら、な」
シリウス「他に質問はないか? ないなら、次は千夏ちゃん、いってみようか!」
千夏「わかりました。……ふっふっふ。こういうのは雰囲気が大事だよね。というわけで、出でよ〜っ!! それ、ピカーッ!」
???「おお? なんだここ? また座談会か?」
千夏「来た〜っ!」
???「……あ、なるほど。お前がおれのマスターなのか。で、おれはサーヴァント、と。とりあえずは初めましてだな。おれはアスロック・ウル・ア――」
フィアリス「待たぬかーーーっ!!」
シリウス「な、なんてサーヴァントだ……!」
イリス「ええ、まさか召喚時に自ら真名を口にするなんて、ね。それもマスターが勢揃いしているところで……」
???「お? なんだお前、ミ――」
ライダー「あたしの真名、しゃべろうとすんなっ!」
シリウス「本当に、なんてサーヴァントだ……」
イリス「ええ……。召喚された直後とはいえ、元の世界で顔見知りだった他サーヴァントの真名が記憶に残っているなんて……。もちろん、夢から覚めたときみたいにすぐ忘れるでしょうけど、それでも規格外、なんてものじゃないわ。悪い意味で……」
大河「うわあ……。そ、それよりもライダー! いまのすごい蹴りだったな! あ、もしかして……」
大河『ねえ、もしかしていまのが『宝具』の、ミーティアちゃ――』
ライダー『違う! いまのはただの蹴り! ほら、『真名』の欄はまだ『???』になってるでしょ!?』
大河(携帯端末機を見て)『あ、本当だ。がっかり……』
守「へえ〜。千夏姉ちゃんのサーヴァントの真名は『アスロック・ウル・アなんとか』っていうのか。よし、いきなり情報ゲット!」
千夏「あの……。『宝具』を使ったら『真名』の欄が埋まるってことは、裏を返せば真名を知られるってことは『宝具』がどういうものであるか知られちゃうってことだよね? 一人だけ必殺技(?)がバレた状態からスタートっていうのは、さすがにフェアじゃなさすぎるんじゃ……」
シリウス「そうだな。サーヴァントのうっかりミスで、マスターにはなにも悪いところがなかったわけだし。……ちょっと頼めるか? イリス」
イリス「わかったわ。じゃあ――」
(イリス、すうっと息を吸い)
――心壊す記憶 時間(とき)の流れに埋もれて眠れ
いま このとき この場所で
起こったことよ セピアにかすめ
残るは唯一 未来への翼
記憶は無意味 過去(おもいで)は無価値
ゆえにこそ 忘れてほしいと私は願う
心の傷あと もう増えることのないように――
イリス「はい、これでよし。チナツ以外のマスターには彼の真名を忘れてもらったわ」
千夏「そんなこともできるんだ……」
――ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!
千夏「あ、この音って、確か……」
大河「自サーヴァントの情報取得を報せる音だったよな」
千夏「うん。能力は『筋力A+ 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運D』だって。魔力と幸運は低めだけど、けっこうなアタリサーヴァントみたい! スキルとかは……」
○千夏のサーヴァント
クラス:セイバー
マスター:岡本千夏
真名:アスロック・ウル・アトール
宝具:???
能力:筋力A+ 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運D
スキル
・対魔力〔B〕
魔術に対する抵抗力。
〔B〕であるなら、初級や中級レベルの精霊・精神魔術や初級の超魔術までなら余裕で耐えられる。
・聖霊の加護〔B〕
精霊が聖霊であることに(本能的に、ではあっても)気づけた者のみが持つスキル。
聖霊(精霊)には地・水・火・風の四属性があり、彼はその中の『火』の聖霊の加護を受けている。
そのため、彼の使う『精霊魔術』は『聖霊魔術』と呼称され、『対魔力』のスキルを持つサーヴァント相手でも多少ならダメージを与えることが可能(もっとも、『火術』限定ではあるが)。
ちなみに、彼は『本能的に気づけた』タイプであり、聖霊に関する知識をまったく持っていない。なので、彼自身は発音するときも紙に文字を書くときも『精霊』のほうの漢字を使っている。
・善性〔B〕
善人であることの証。
これが〔B〕である者は『第五階層世界』の下段階に心が通じており、センスがあって、もう少しの精進を積めば<通心波(テレパシー)>を使えるようになることもある。
・人物解説
剣士のサーヴァント。
クラス名が示す通り、剣(主に長剣)を用いての近接戦闘を得意とする。
重い一撃が持ち味であり、大地に根を張るようにして立ち、上段から剣を振り下ろす戦闘スタイルが特徴的。そのためか敏捷はやや低く、相手の攻撃を受けやすい。
元いた世界では教育(主に理数系)を受けていなかったせいか、頭があまり回らないのが欠点である。
あと、不運。どうしようもない程ではないのだが、運が決定的に足りていない。しかし、彼自身が厄介事に自ら飛び込んでいく性分なのが原因なのでは、と囁かれることもある。
『セイバー』以外の適正クラスは存在せず、『聖杯戦争』時は必ず『セイバー』で召喚される。そのため、『セイバー』で召喚された状態の『同郷の友人』と剣を合わせたことは一度もない。
大河「あと、令呪を使って宝具名くらいは訊いておけよ? 俺みたいに」
千夏「うん、そうだね」
千夏『えっと、聞こえる?』
セイバー「おう! で、なんだ? 『宝具』のことを訊きたいのか? 埋まってない欄、そこしかないもんな〜」
イリス「ちょっとセイバー! 声に出してる!」
セイバー『あ、やばっ!』
千夏『だ、大丈夫かなぁ……。鎧着てるし、強そうではあるんだけど……』
セイバー『大丈夫大丈夫。で、宝具だよな。おれの宝具は『すべてを斬り倒す聖霊の刃(セイント・ソウル・ブレイド)』だ!』
千夏『…………。う、うわぁ〜っ! なんか、さっきまでの失態が全部帳消しになっちゃうくらい、格好いい名前!』
セイバー『おう! 一度に敵一体しか攻撃できないけど、ものすごい威力なんだぞ! おれの宝具! 火の精霊の力を借りて、こう、バシューッ! ボワーッ! とだな!』
千夏『すごいすご〜いっ!』
守「なんだろう。千夏姉ちゃんがものすごい笑顔に……」
大河「なにを話しているのかがちっともわからないから、けっこう第三者の目には変な風に映るんだな」
ライダー「あー……。あたしたちも、これからは気をつけましょうか?」
大河「だな。で、次は守の番か?」
守「どうだろ?」
シリウス「別に誰でもいいっちゃあ誰でもいいんだが、そうだな、守くん、いってみようか?」
守「言っておくけど、僕は千夏姉ちゃんみたいに『出でよ!』とか『ピカーッ!』とか言わねぇからな」
シリウス「わかってるわかってる。そういうキャラじゃないもんな。というか、そんなこと言わなくても召喚はできるんだっての」
――ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!
シリウス「ほら、来ただろ?」
守「本当だ。どれどれ。『筋力A+ 耐久A 敏捷B+ 魔力A 幸運C+』……。うおっ! なんかメッチャいいの引いたっぽい!?」
イリス「そ、それはどうかしらね、ほら……」
???「グガァァァァーッ!」
フィアリス「涙目で吼えておるのう……」
守「あ、あれは一体……?」
大河「引き続き、端末を見てみろよ。そうすりゃわかるだろ」
守「あ、ああ。そうだな……」
○守のサーヴァント
クラス:バーサーカー
マスター:広世守
真名:???
宝具:???
能力:筋力A+ 耐久A 敏捷B+ 魔力A 幸運C+
スキル
・バーサーカー化〔A〕
戦闘能力が大幅に上がる代わりに理性の大半を奪われるスキル。
スキルというよりも呪いのようなものであり、完全な解呪は令呪を行使しても不可能とされている。
本来は弱いサーヴァントを強化するためのスキルである。
・無詠唱〔EX〕
呪文の詠唱をせずして魔術を発動させることのできるスキル。
ランクが〔EX〕にまでなると、『呪文名』すらも口にする必要がなくなる。
・神性〔B〕
創造主に近き者のみが持つスキル。
彼女は本来、〔A〕のランクだったのだが、『本体』ではなく『端末』であるため、ランクが〔B〕に下がってしまっている。
しかし、それでもすべての神界術を行使することは充分に可能。
・人物解説
狂戦士のサーヴァント。
『バーサーカー化』のスキルによって理性がほとんどない状態で召喚されている。ゆえに、まともにしゃべることができない。
しかし、それでもマスターの命令には背かず、また能力面も敏捷がわずかに下がってこそいるものの、それを補ってあまりある筋力と耐久を身につけている。
元いた世界では人間よりも遥かに上の『力』を有する『天上存在』であり、かなりの気分屋でもあった。
適正クラスには、他に『キャスター』と『アサシン』がある。
守「アタリを引いたのか、それとも大ハズレを引いたのか……」
イリス「ま、まあ、気まぐれで身勝手な行動はとらないようだし、いいじゃない。さあ、レッツ会話!」
守「どうやってだよ!? まともにしゃべれないんだろ!?」
バーサーカー「ウグガアァァァァッ!!」
大河「あ、泣いた」
千夏「泣いちゃったね。一応、同い年かそれよりも下の女の子だから、守のほうが悪者に見えるし……」
守「なんでだよ!? 泣きたいのは僕のほうだぞ!?」
シリウス「こうなったら、本当の意味で令呪を使用するしかないな」
守「や、無理だって! ほら、この『バーサーカー化』の項目見ろよ! 『完全な解呪は令呪を行使しても不可能』ってあるだろ!?」
シリウス「ああ。完全な解呪は不可能かもしれない。しかし、一時的に話すくらいなら、あるいは……!」
守「あるいは、じゃねぇっ! なにそれ! こんなところで二回しか使えない令呪を使えっての!?」
フィアリス「円滑なコミュニケーションを望むのならば、使うべきじゃろうな。ほれ、いまのままじゃ『宝具』すらわからんじゃろう?」
守「うるせえよ、電波フィアリス! ……くそっ!」
シリウス「おおっ! 守くんの令呪が光を放ち始めた! 本当に使うんだな!?」
守「やるっきゃねえんだろ! ちくしょう! バーサーカー、少しの間でいい、『まともにしゃべれ!』」
――守は『令呪』を使った!
バーサーカー「ウガァァァぁぁっ……あれ? しゃ、しゃべれる!? ボク、ちゃんと話せる! ありがと、マスター!」
守「おうっ! でも時間はあまりねえんだろ!? とっとと内緒話モードに移行するぞ!」
バーサーカー「オッケー!」
守『な、なんか思ってたよりもフランクっつーか、普通に話せる奴っぽいな、お前』
バーサーカー『まあね! というか、なんでボク、バーサーカー? このクラスじゃないとマスターを裏切るから……? ま、まあ、それはいいや、深く考えると落ち込むことになりそうだし、時間もないし。――で、手短に済ますけど、ボクの宝具は『極悪遊戯(オーバーキル・ゲーム)』! 一定時間、ぐんっと巨大化して、敵をプチッと殺っちゃう、天枢(てんすう)結界魔法の一種だよ。一方的な殺戮ショーの始まり始まり〜! ってね』
守『可愛い顔と口調なのに、メチャクチャ怖いこと言うのな、お前……』
バーサーカー『それがボクだからね! まあ、それはともかく、『ボクと話す』というだけのことに、二回しか使えない『令呪』を使ってくれたこと、すごく嬉しかったよ! これからよろしくね!』
守『へ? お、おう。つーか、なんか照れるな。そういう風に言われると。ともあれ、こちらこそ、よ――』
バーサーカー「グアァァァァァッ!!」
守「うわぁっ! いきなり元に戻りやがったぁっ!!」
大河「なんだ守っ!? さっきと同じように吼えられただけでそこまでビビるって、どんだけコミュニケーションが上手くいかなかったんだよ!」
守「違ぇよ! 円滑にいってたからこそ、いきなり元に戻られてビビっちまったんだよ!」
大河「そ、そうか……。えっと、じゃあ次の人、でいいのかな?」
シリウス「そうだな。じゃあ次は――」
スピカ「わたくしがやりますわ! 『残り物には福がある』という言葉に従って、一番最後に召喚するつもりでいましたけれど、すでに三人中二人がアタリっぽいサーヴァントを引いてしまっていますもの。最後まで待って、とんだハズレサーヴァントを引くことになるのだけはごめんですわ!」
シリウス「妹よ……。言いたいことはわかるが、もうちょっとオブラートに包めないか?」
スピカ「さあ、おいでなさい! わたくしの忠実なる召使い!!」
シリウス「無視ですか、そうですか……」
イリス「ね、ねえスピカ。召使いはあんまりじゃない?」
スピカ「なぜですの? 『サーヴァント』は『召使い』や『使用人』を意味する単語でしょう? もちろん『従者』でもかまいませんけれど。どちらにせよ、主人(マスター)であるわたくしに尽くす存在であることには変わりないわけですし」
フィアリス「言っておることは、大筋では間違っておらんのじゃがな……」
――ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!
スピカ「来ましたわね! さあ、まず能力は『筋力A 耐久A 敏捷A 魔力C+ 幸運A+』。……あら? 意外と平均的?」
守「どこがだよ! 魔力以外、これといって劣っているところが無えじゃねぇか!」
スピカ「まあ、そうとも言えますわね。それはつまり、飛び抜けていいところがないとも言えるわけですけれど。でもまあ、とりあえず、わたくしの召使いの能力値としては、ギリギリ及第点といったところでしょうか」
???「ギリギリ及第点で悪かったな。というかこの女、いつか高笑いでもし始めそうだ……」
スピカ「言葉遣いがなってませんわね。わたくしはあなたのマスターですわよ?」
???「知るか! 大体、オレはあんたのサーヴァントではあるけれど、便利に使われるために呼ばれた召使いじゃないし!」
イリス「あらあら、これは……」
シリウス「能力値は高いのに相性が最悪というパターン、四人目にしてきたかもな」
スピカ「お黙りなさい、サーヴァント! そんな偉そうな口を利けるほどの優れたスキルがあなたにあるというのですか!? それとも王族だとでもいうのですか!?」
???「うっ……。王族じゃあないけど、スキル自体は、きっとすごい部類に入る、はず……」
スピカ「ふん。急に弱気になりましたわね。どれどれ……」
○スピカのサーヴァント
クラス:アサシン
マスター:スピカ・フィッツマイヤー
真名:???
宝具:???
能力:筋力A 耐久A 敏捷A 魔力C+ 幸運A+
スキル
・気配遮断〔A〕
『アサシン』のクラスで召喚されたサーヴァントが必ず有するスキル。
暗殺には欠かせない技能であり、ランクが〔A〕であるなら、敵がよほどの実力者でない限り気配を察知されることはない。
・トレジャーハント〔EX〕
宝がどこにあるかを見極め、それを持ち帰ってくるのに長けた者のみが持つスキル。
ランク〔EX〕ともなれば、伝説級の魔法の品(マジックアイテム)を見つけだすことさえも可能となる。
また、この技能を持つ者は情報収集能力や直感力にも長けていることが多い。
・強運〔B〕
ここぞというときに発揮される運の強さ。
普段はまず発動しないスキルではあるが、ここを逃してはならない、ここだけは確実に押さえなくては、という状況に陥った際、その行動が功を奏する確率が跳ね上がる(ランクが〔B〕の場合、成功確率は約八割)。
『能力』の面からみるならば、『その状況』では幸運が〔A+〕から〔EX〕に上昇している。
・人物解説
暗殺者のサーヴァント。
しかし、適正はギリギリ足りている程度であり、彼の性格的にも暗殺はあまり向いていない。
戦闘スタイルは、『セイバー』としてしか召喚されない『同郷の友人』とはある意味において間逆で、敏捷の高さと長剣の間合い、それと多彩な攻撃魔術とを組み合わせて敵を翻弄していくというもの。
元いた世界では、とある国の将軍の長男として生を受けたため、幼い頃から剣術の稽古に多くの時間を割いてきた。
そのため、『セイバー』のクラスで召喚することも可能なのだが、前述した『同郷の友人』と剣を合わせたいという願いから、『セイバー』で呼び出されることは極めて稀。
ちなみに、『バーサーカー』の適正も満たしている。
スピカ「…………」
アサシン「どうだ! どれもすごいスキルだろ! 特にランクが〔EX〕のやつ!」
スピカ「……ふ、ふん! 確かに悪くはないスキルですけど、でも……」
アサシン「でも?」
スピカ『でも結局、戦闘には直接関係しないスキルなんじゃありません? 『トレジャーハント』なんて』
アサシン「なんだとおっ!? それ、オレの生きがいみたいなものなんだぞ! それに――」
スピカ『しっ! 情報は極力、漏らしたくありませんのよ。あなたも内緒話モードに移行しなさい!』
アサシン『ぐっ、それは……そうだな。――で、話を戻すが、この『聖杯戦争』の目的は、最後まで勝ち残ることじゃなくて、あくまでも『七つの世界を翔ける杯(カーツア・アーク)』を見つけだし、手に入れることだろう? なら、伝説級の品まで見つけることのできる『トレジャーハント〔EX〕』なんて、はっきり言って最高のスキルじゃないか!』
スピカ『そ、それは確かに……』
アサシン『更にだ! 『アサシン』として召喚されたオレは『気配遮断〔A〕』なんてスキルまで持ってる! これを奇襲ではなく、戦闘を避けるために使用すれば……どうだ? 余裕で『杯』を手に入れられそうじゃないか?』
スピカ『言われてみればそうですわね。もし戦闘になっても『強運』のスキルがありますから、八割方勝てるわけですし……』
アサシン『あ、いや、それは違う』
スピカ『なんですの? 成功確率は約八割、なのでしょう?』
アサシン『そうなんだけど、それは勝てる確率が約八割なんじゃなくて、ここぞといったときの行動が成功する確率が約八割なんだ。つまり、端的に言うなら『生き延びることのできる確率』が約八割』
スピカ『…………。紛らわしいスキルを持ったサーヴァントですわね! 大体、その生き延びることのできる確立すら八割しかないようですし……、使えない、とまでは言いませんけれど、やっぱり『約八割』というのが引っかかりますわ!』
アサシン『なにおう! この場合の約八割ってのはなぁ! ……約八割ってのは……ええと、なにかいい喩えは……っと、そうだ! 『腹が減ってもう駄目〜、飢え死にする〜』ってときに偶然誰かが通りすがり、パンを恵んでくれる確率が約八割ってのと同じことなんだぞ! 『強運』のスキルを持ってない奴だったら、そんなことが起こる確率、何割くらいだと思うよ!?』
スピカ『む……。まあ、そう考えてみれば、確かにかなりの『強運』持ちですわね、あなた』
アサシン『そうだろう、そうだろう』
スピカ『……でも! わたくしはそんな窮地に立たされることなく、優雅かつ華麗に圧勝したいのですわ!!』
アサシン『…………。あっ、しょう(あっ、そう)』
スピカ『くだらないダジャレを言うのはおやめなさい!』
アサシン『ああもう! ずいぶんと注文の多いマスターに召喚されちまったなぁ、ちくしょう!』
シリウス「お〜い、我が妹よ。そろそろ次のマスターにサーヴァントを召喚してもらいたいんだが、いいか?」
スピカ「え!? も、もうちょっとだけ時間を! まだ『宝具』のことを訊いていないのです!」
スピカ『というわけで、キリキリとおしゃべりなさい!』
アサシン『一応は味方のオレに『キリキリ』とか言うか、普通!? ……さ〜て、どうしよっかな〜?』
スピカ『……『令呪』、使いますわよ?』
アサシン『やめろよ、おい! たった二回しか使えないんだろう!?』
スピカ『嫌なら早く!』
アサシン『……わかったよ。わかりました。オレの宝具は『すべてを薙ぎ払う妖精の剣(クリスタル・ソード)』。超広範囲に渡って、かなりの威力の衝撃波を放てるんだ。まあ、『かなりの威力』といっても、一点集中型の宝具のそれには及ばないことが多いんだけどな……』
スピカ『宝具も宝具で、強いのだか大したことないのだか……』
アサシン『いやいやいやいや! 大したことあるって! 気取られずに相手の姿が視界に映る程度まで近づいて、あとは超広範囲をズバッ! だぞ!? 充分、強力だって!』
スピカ『まあ、それがどこまで本当なのかは、実戦で確かめさせてもらいますわ。あなたの自己申告は、どこか自分に不利な部分を隠しているような気がしてなりませんから』
アサシン『酷ぇ!!』
イリス「さて、そろそろいいかしら?」
スピカ「ええ、ちょうど終わりましたわ。次は……九樹宮九恵?」
九恵「そのようね、ほら」
――ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!
ライダー「いつの間に呼んだのよ……」
九恵「能力は『筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A+ 幸運B』。どうやら、魔術メインで戦っていくサーヴァントのようね」
スピカ「あらあら、ご愁傷様ですわね。近接戦闘が本格的に苦手だなんて」
???「うぅ……」
九恵「そんなにしょげかえることはないわよ。いまのところ、魔力でならバーサーカーと同列一位なのだから」
スピカ「魔力だけなら、の間違いでは? それでは役立たずもいいところでしょうに」
フィアリス「まあ、スピカの言うことにも一理あるの。クラスが『アーチャー』であったり、かなり強力なスキルを有しておるならまだよいが、そうでないとなると……」
九恵「――ちょっと待って」
○九恵のサーヴァント
クラス:ヒーラー
マスター:九樹宮九恵
真名:???
宝具:???
能力:筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A+ 幸運B
スキル
・対魔力〔B〕
魔術に対する抵抗力。
〔B〕であるなら、初級や中級レベルの精霊・精神魔術や初級の超魔術までなら余裕で耐えられる。
・薬品調合〔EX〕
薬草などから薬を作りだす技能。
ランクが〔A〕以上であるなら、魔術を用いての調合が可能となるため、元の材料からは予想もできない高度な効能を持つ薬品を作りだすこともできる。
・善性〔A+〕
善人であることの証。
これが〔A+〕である者は『第五階層世界』の上段階か『第六階層世界』の下段階に心が通じており、センスさえあれば<通心波(テレパシー)>を使うことも可能である。
なお、どうやら彼女はすでに問題なく使いこなせる様子。
・人物解説
法術師のサーヴァント。
主に魔術による援護や回復を得意とするクラスであり、『キャスター』と『最弱のサーヴァント』の座を譲り合っている。
元いた世界では『魔法医』という少々特殊な職業に就いており、薬品の調合方法において試行錯誤を重ねた末、『薬品調合〔EX〕』のスキルを得るまでに至った。
性格は温和であるが、降りかかってくる火の粉を払うくらいの戦闘能力はあり、非力ではあっても近接戦闘が壊滅的に苦手というわけではない。
適正クラスには、他に『キャスター』と『アサシン』がある。
シリウス「どうだった?」
九恵「……ひとつ、訊きたいのだけれど。『対魔力』というスキルはサーヴァント全員が持っているの?」
シリウス「いや、全員が持っているわけではないよ。必ず持っているのは『セイバー』と『アーチャー』、そして『ヒーラー』の三騎」
スピカ「ふむふむ。つまり、九樹宮九恵の『ヒーラー』と、岡本千夏の『セイバー』は『対魔力』のスキルを有している。これから召喚されるであろう『アーチャー』もまた同じ。……ふふふ、お兄様に尋ねたのが運のツキでしたわね、九樹宮九恵! これであなたと、ついでに岡本千夏のサーヴァントのスキルをひとつ、見破りましたわ! ……まあ、ランクはわからないままですけれど」
シリウス「いや、見破ったもなにも……」
九恵「話の流れから、私の『ヒーラー』が『対魔力』のスキルを持っていることは全員にバレたものと思っていたのだけれど。そうする価値があると思ったからこそ訊いたのだし」
千夏「それに、あたしはバレてもそんなに気にしないなぁ」
セイバー「おれも気にしないなぁ。大体、サーヴァントなら誰でも知ってることだし」
アサシン「まったくだ。訊かれればオレだって答えてやれた質問だぞ?」
スピカ「な、なんですの、それ……。これでは、まるでわたくしが――」
シリウス「ただのバカ、みたいだな」
スピカ「うるさいですわよっ!」
九恵『さて、あの兄妹が言い争いをしているうちに、『宝具』のこととか教えてもらえるかしら?』
ヒーラー『あ、うん。でもその前に。……ごめんね、せっかく召喚してくれたのに『キャスター』と一、二を争う『最弱のサーヴァント』なんか引かせちゃって……』
九恵『過ぎたことをあれこれ言っても仕方ないでしょう? それに『キャスター』とやらも含め、誰かは必ず引いたのだから。今回はそれが私だったというだけのこと。なら、そのことを悔しがるよりも、これからのことを考えたほうが建設的ではないかしら?』
ヒーラー『あ……う、うん、そうだねっ! 一応わたし、通心波(テレパシー)とか、簡単な攻撃魔術は使えるし! いやまあ、攻撃魔術のほうは『対魔力』持ち相手だと効果がゼロに近くなっちゃうわけだけど……」
九恵『でも通心波(テレパシー)は使えるわ。『対魔力』と関係ないのでしょう?』
ヒーラー『うん。あれは魔術であって魔術ではないものだから。あと宝具以外で使えそうなのは、『薬品調合〔EX〕』のスキルかな、やっぱり。材料次第では、近接戦闘ができるくらいの筋力や耐久が得られる薬が作れるかも』
九恵『それは、正直、材料のアテがないのよね。とりあえず、近接戦闘なら私がなんとかできると思うわ。まあ、我流だからどこまで通じるかは予想できないけど』
ヒーラー『そ、それは危険すぎるよ! 『キャスター』相手ならまだしも、『セイバー』や『アサシン』、『バーサーカー』には絶対太刀打ちできないって!』
九恵『わかってる。いまのは冗談よ。少しは気が楽にならないかなって。それにどうやら、『キャスター』が相手なら、私でも近接戦闘でいい勝負ができるみたいじゃない』
ヒーラー『あう、それは言葉のアヤというか、なんというか……。……あ、それとわたしの宝具だけど、わたしのはもう、本当に防御に特化したものでね、『魔を寄せつけぬ聖結界(メルティング・ゾーン)』っていうんだけど……』
九恵『なるほど。もう名前からして攻撃には向いてなさそうね』
ヒーラー『ごめんなさい……。一応、この宝具の展開中に入ってきた敵は、その瞬間から身が溶けるような感覚を覚えて、それ以上こっちに来なくなるんだけど、もう、本当にそれだけで……。きっと、薬品の調合中や治療中は誰にも入ってきてほしくないっていうわたしの願望が形になった宝具なんだと思う』
九恵『つまり、自分の身を護ることがすべての宝具なのね』
ヒーラー『うん。正確には『わたしとマスターの身を』だけど』
九恵『了解。なんにせよ、どれだけ戦闘を避けられるか――他のマスターたちが潰し合ってくれるのをどこまで待てるかが勝利の鍵となりそうね』
ヒーラー『そうだね。――それと、改めて。今回は『アサシン』で出て来れなかったから苦労かけちゃうと思うけど、これからよろしくね』
九恵『ええ、こちらこそ』
九恵「――さ、終わったわよ」
スピカ「まったく、それだからお兄様は――」
九恵「……まだやってたの?」
シリウス「おや、終わったのかい? じゃあ、次にいこ――」
スピカ「ちょっと、お兄様、言い逃げするつもりですの!?」
シリウス「…………。仕方ない。イリス、俺はちょっと妹とじゃれあってるから、進行役よろしく〜」
イリス「はいはい。本当、仕方ないわね」
スピカ「こらそこ! 誰が誰とじゃれあってると言いますの!?」
イリス「さて、召喚を済ませていないマスターはあと二人ね。ミスズとシオリ、どっちが先にやる?」
詩織「あ、副部長、お先にどうぞ」
美鈴「ん? そうか? 私もあとでよかったのだが……まあ、いいか。では――コホン」
詩織を除いた全員『?』
美鈴「彩桜学園の第一演劇部、副部長である国本美鈴の名において命ずる。疾く馳せ参じよ、我が右腕たるサーヴァントよっ!」
大河「ノリノリだ! 右手を前に出してポーズまでキメてるし、マジでノリノリすぎる!」
守「普段のキャラからは想像もつかねぇな!」
千夏「先輩ってあんな活き活きとした表情ができたんだ……」
詩織「普段はテンション低めですけど、演劇部の部員ですからね! お遊びであっても、『演技』において副部長が手を抜くなんてこと、ありえませんよ!」
九恵「そ、そう……。彼女には私と同じ匂いを感じていたのだけれど、どうやら考えを改める必要がありそうね……」
ヒーラー「うん。あの子は九恵ちゃんとはまったく別の人種だね……」
――ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!
美鈴「どうやら、無事応じてくれたようだな。よかった。気合いが足りていなかったらどうしようかと」
シリウス「そりゃ応じてくれるさ。……あんな大仰なことをやらなくてもね(ボソッ)」
イリス「というか、気合いって……」
美鈴「さて、まず能力は『筋力D 耐久D 敏捷C+ 魔力B 幸運B』と。……ん? ランクが『A』の能力がひとつもないぞ。もしかして、私もハズレサーヴァントを引いてしまったのか? ま、まさか気合いが足りなかったのか!?」
シリウス「関係ないから。気合いは関係ないから」
イリス「それに、いままでがいいサーヴァントが来すぎていたのよね。その能力値は平均よりちょっと下、くらいのものだし」
九恵「つまり、私の『ヒーラー』はちょうど平均?」
フィアリス「そうじゃな。非常に平均的なサーヴァントじゃったと言えるじゃろう」
スピカ「やっぱり、残り物には福がないようですわね! 中盤で引いておいてよかったですわ!」
アサシン「お前、オレに散々なこと言っておいて……」
美鈴「ああ、表情からして、かなり自分のサーヴァントを罵倒してたようだったな」
???「それはそうとマスター、ステータスの確認をお願いします」
美鈴「ん? ああ、わかった」
○美鈴のサーヴァント
クラス:アーチャー
マスター:国本美鈴
真名:???
宝具:???
能力:筋力D 耐久D 敏捷C+ 魔力B 幸運B
スキル
・対魔力〔C〕
魔術に対する抵抗力。
〔C〕である場合、初級や中級レベルの精霊・精神魔術は余裕で耐えられるものの、超魔術に耐えるのは少々難しい。
・投擲(エアナイフ)〔B〕
エアナイフを放ち、遠くからでも高確率で目標に命中させる技能。
どこに隠し持っているのか、彼女の保有するエアナイフの本数は100に届かんばかりである。
なお、このスキルを使用している間のみ、筋力が〔D〕から〔C〕に上昇する。
・善性〔A〕
善人であることの証。
これが〔A〕である者は『第五階層世界』の上段階に心が通じており、センスさえあれば、いつ<通心波(テレパシー)>が使えるようになっても不思議ではない。
しかし現段階において、彼女に<通心波(テレパシー)>は使えないようだ。
・人物解説
弓兵のサーヴァント。
魔術とローブのあちこちに隠し持つエアナイフによる遠距離攻撃を得意とする。
『エアナイフ投げの名手』と呼ばれていたためか、エアナイフによる遠距離攻撃の際は筋力がワンランク上昇するので、迷ったときは魔術よりもこちらを率先して使っていったほうがいい。
元いた世界では父が『聖魔道士(セント・ウィザード)』という一種の名誉職に就いており、彼女はその地位を継ぐことを前提に修行を続けてきた。魔術はそれゆえに身についたもの。
といっても、決してぞんざいな学び方をしたわけではなく、その証拠として、精霊魔術や精神魔術だけではなく、いくつか強力な神界術を使うこともできる。
しかし、やや早とちりをする傾向があり、また思い込みが激しいタチでもあるため、そこは注意が必要。
他には『キャスター』のクラスで召喚されることもある。
「『キャスター』で召喚された際には筋力が〔E〕に、魔力が〔A〕に変化するんです。というか、私の本来の能力はこっちのほうなんですよ?」とは本人の談。
美鈴「ふむ、これは……」
アーチャー「……いかがでしょう?」
詩織「いくら『アーチャー』でも、肝心の筋力が〔D〕というのはキツそうですよね……」
美鈴「いや……」
美鈴『これは実質、筋力は〔C〕と考えていいんだよな?』
アーチャー『え? あ、はい。一応、エアナイフ投げがメインの攻撃手段となってますので。……あ、でも魔術のほうには、あまり期待しないでくださいね?』
美鈴『ああ、それは承知している。せいぜい、牽制の手段程度に考えておくさ』
アーチャー『そうしていただけると助かります……』
美鈴『……ん? どうした? 心なしかテンションが下がったように感じられたが』
アーチャー『いえ、気にしないでください。ちょっとだけ、元いた世界で少しばかりとはいえ持っていたプライドが、本当にちょっとだけ傷ついただけですから……』
美鈴『そ、そうか……。じゃあ、話を戻すが。耐久の低さを気にしなくて済む、遠距離からのナイフ投げを基本戦術にしていけばいいんだな?』
アーチャー『はい、そうですね。ランクが〔C〕とはいえ、『対魔力』のスキルを有していますし、魔力自体も〔B〕なので、遠距離からの魔術攻撃は、そんなに怖くありませんから』
美鈴『超魔術とやらには警戒が必要そうではあるがな』
アーチャー『ええ、それは確かに。でも大丈夫だと思いますよ? 強力な魔術は、詠唱時に『大きな魔力の動き』が発生しますので、それを感知できれば割とどうとでもなると思います。……マスターが魔術に巻き込まれたりしない限りは』
美鈴『わかった。気をつけるよ。で、あとは『宝具』か』
アーチャー『宝具、ですか……。ええっと、正直、私の宝具は大したものじゃないんですよね。『幻即現(ファンタズム・デベロップ・リアライズ)』といって、心の中に思い描いたことを即、現実に起こすことができるのですが――』
美鈴『すごい力を持った宝具じゃないか! 魔術のことはなにひとつわからない私でも、それが常識外れのものであることはわかるぞ!?』
アーチャー『はい。それは否定しません。事実、自分でもよくこの境地まで至れたものだと思いますから。……ただ、これには『マスターや使用者自身が『現実には起こりえない』と思っている場合、成功率が著しく下がる』という欠点がありまして』
美鈴『ふむ。……具体的には?』
アーチャー『空からお金を大量に降らせる、なんてことをやろうとしても、『そんなことが現実に起こるわけない』と私やマスターが思えば、本当に空からお金が降ってくる確率が……そうですね、ニ〜三割くらいになってしまうんです』
美鈴『なるほど。『信じられないことは起こらない』ということか』
アーチャー『そういうことなんです。いえ、正確に言うなら『起こらない』ではなく『起こる確率がニ〜三割になる』ですが』
美鈴『裏を返せば、『私たちは『杯』を手に入れられる』と心から信じて、その宝具を使えば……』
アーチャー『はい。現実に『杯』を手に入れることができるでしょう。しかし、そこまでの道のりを私たちの頭の中で具体的に思い描けなければ……』
美鈴『つまり、長期的な使用には向いていないんだな。それよりも、『この攻撃は必ず当たる』と信じられる状況で使ったほうがいい、と』
アーチャー『そんな感じです。あ、もし『敵は『対魔力』持ちではない。だからこちらの魔術で致命傷を与えられる』と信じていれば、実際に敵が『対魔力』のスキルを有していても、それを無視して致命傷を与えることができます。まあ、『対魔力』を確実に持っていると私自身が知ってしまっている『セイバー』と『ヒーラー』を相手どった場合は、そうと信じることは絶対できませんから『対魔力』を無視するなんてできないでしょうけど』
美鈴『ふむ。なんとかと宝具は使いよう、ということか……』
アーチャー『バカやハサミと同列扱いされるのはちょっと嫌ですけど、宝具には、多かれ少なかれそういう側面がありますからね』
美鈴『承知した。幸い、私は『非常識』には寛容なタチだ。少なくともガチガチのリアリストではないから、『信じることによってあり得ない現象を起こす』という側面では、そこまで足かせになることはないと思う』
アーチャー『はい。その言葉、信じさせていただきます』
美鈴「さて、こちらの相談は終わった。詩織、引いていいぞ」
アーチャー「お時間を長くいただいてしまい、申し訳ありませんでした」
詩織「あ、はい。というかアーチャーさん、そんなお気になさらず」
大河「ずいぶんと礼儀正しいサーヴァントだなぁ。俺のとは大違いだ……」
ライダー「しみじみ言うなっ!」
詩織「さて、ではいよいよ私の番ですね。一番最後だから、きっといいのが来るはず……」
九恵「信じてたのね、『残り物には福がある』理論……」
スピカ「ここまでの流れを考えれば、『残り物には福がない』ことくらい、わかるでしょうに……」
シリウス「言うな、スピカ。確かにあと残っているのは『キャスター』しかいないわけだが、それでも――いや、だからこそ、それは言っちゃいけない」
詩織「うぅぅ……」
千夏「あ、すっかり涙目になっちゃった」
ヒーラー「まあ、『最弱のサーヴァント』だもんね、『キャスター』は。……わたしと並んで」
詩織「いいんです、それでも。……さあ、平凡な一般人ではありますが、それでも私と一緒に戦ってくれるという『最弱のサーヴァント』、『キャスター』よ! 出でよ! 我が呼びかけに応え、いまここにっ!!」
シリウス「また叫んだっ!」
イリス「第一演劇部の面々は本当、ノリノリで召喚するわね……」
フィアリス「呼びだせるのが『キャスター』のみとわかっているからか、ダイレクトに『キャスター』を召喚しておるしの。これで『キャスター』以外が来たら、それはそれで面白いのじゃが、まあ、それはあり得ぬか……」
――ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!
詩織「召喚に応じてくれたようですね。……さあ、(おそらくは)最弱同士の私たちですけど、頑張りましょう!」
キャスター「…………」
詩織「ど、どうしました? いきなり土下座なんてしちゃって……」
キャスター「ごめんなさい。召喚されちゃってごめんなさい。いえ、むしろ生まれてきちゃってごめんなさい……」
詩織「な、なんなんですか、本当に!?」
キャスター「聞こえてたの、一応。そこにいる金髪の男性が『あと残っているのは『キャスター』しかいない』あたりから……」
シリウス「げっ!」
イリス「シ〜リ〜ウ〜ス〜?」
シリウス「いや、まさか聞こえていたとは……! というか、召喚に応じる前から聞いてたって……。なんか、セイバーとはまた違った意味で規格外のサーヴァントだな」
キャスター「まあまあ、イリスさん。そんなに彼を責めないであげて。私が申し訳なく思っているのは、それだけが理由というわけではないのだから」
シリウス「原因を作ったキミがそれを言う?」
詩織「というか、まだあるんですか? 申し訳なく思う理由」
キャスター「ええ。私の適正クラスは一応、『キャスター』以外もあるのだけれど」
詩織「ああ、そっちで召喚されなかったから申し訳ない、と? いいんですよ、もう『キャスター』枠しか残ってなかったんですから」
キャスター「ううん、そうじゃなくて。そのもうひとつの適正クラスがね、『ヒーラー』なの……」
全員「…………」(重い沈黙)
シリウス『おい、どうするよ……』
イリス『まさか、ワーストワンとワーストツーにしか適正がないなんてねぇ……』
キャスター「だから、私を呼んでくれたマスターには、いつもいつも序盤で敗退させてばかり……。こんなことなら、召喚されないほうがずっと……」
シリウス『なあ、マジでどうするよ。もう一度、サーヴァントを引かせるか? ルールから逸脱しちまうけど……』
イリス『そ、そうねぇ。さすがにこれは、シオリにあんまりでしょうし……』
シリウス『だよなぁ……』
詩織「…………。いえ、ここはポジティブシンキングでいきましょう! キャスターさん! 最弱同士で優勝を――『杯』を狙っちゃいましょう!」
キャスター「え、『杯』を……? それは、無理や無茶を通り越して『無謀』じゃないかしら。だって、私の能力――」
詩織「能力なんて!」(言って、チラッと携帯端末機に視線を落とす)
キャスター「……能力なんて?」
詩織「能力なん、て……」
シリウス「ん〜? どれどれ? 能力は『筋力E 耐久E 敏捷D 魔力A+ 幸運C』。うわ、こりゃ酷い。魔力以外、見るところがない」
キャスター「…………」(しょぼ〜ん)
詩織「…………」(硬直)
イリス「シ〜リ〜ウ〜ス〜?」
シリウス「え? ……うわ、しまった! 失言!」
詩織「え、ええと……。でもでも、スキルとかを上手く使えば……」
○詩織のサーヴァント
クラス:キャスター
マスター:西川詩織
真名:???
宝具:???
能力:筋力E 耐久E 敏捷D 魔力A+ 幸運C
スキル
・信仰の加護〔B〕
『蒼き惑星の神々』に対する信仰心が非常に強い者のみが有することのできるスキル。
この技能を持っていると、神界術の威力が格段に上がる。
しかし、彼女は肝心の神界術自体をあまり修得できていない……。
・王族特権〔A+〕
王族として生まれた者のみが持つスキル。
彼女は王族として育てられてはいるものの、生まれ自体はそうではなかったため、ランクが〔A+〕に下がってしまっている。
それでも、それなりの無茶を言うことはでき、事実、ギリギリで適正を満たせていない『キャスター』や『ヒーラー』で召喚されることに成功している。
もっとも、妹にそそのかされてこのスキルを使うたび、彼女は「こんな無茶、するんじゃなかった」と後悔するハメに陥ってばかりいるようであるが……。
・エルフの血〔A〕
エルフという種族に生まれついた者のみが持つスキル。
これのランクが〔A〕である場合、中級までの精霊魔術を詠唱なしで発動させることができる(『呪文名』の発音は必要)。
・人物解説
魔術師のサーヴァント。
主に魔術による攻撃を得意とするクラスであり、『ヒーラー』と『最弱のサーヴァント』の座を譲り合っている。
もっとも、彼女自身の性格が異常に(非常に、ではない)温和であるため、『魔術による攻撃が得意』というのも怪しいところ。
元いた世界では、エルフでありながら某王国で第一王女として育てられるという、相当に変わった経歴を持っており、そのためなのかどうかはわからないが、一応、一般人に比べて肝は座っている様子。
しかし、前述した通りの性格であるため、とにかく戦闘には不向き。
『王族特権〔A+〕』を用いて『キャスター』や『ヒーラー』の適正不足を補ってはいるが、『ヒーラー』であるならともかく、『キャスター』として召喚された場合は、目も当てられないほどの最弱っぷりを発揮する。
詩織「…………」(再度、硬直)
キャスター「ああ、いま『これは酷い』という声が聞こえたような……」
詩織「い、言ってませんよ!? 『これは酷い』なんて、誰も言ってませんよ!? ねえ!?」
シリウス「あ、ああ! 空耳じゃあないかな!?」
フィアリス「空耳でないとすれば、おそらくは読み手の呟きか心の声――」
イリス「フィアリスフォール! しーっ!」
詩織「だ、大丈夫です! 見るところはありますよ! たとえば……」
キャスター「たとえば……?」
詩織『そうですね、この『エルフの血〔A〕』のスキルは使えるのでは? 詠唱要らないって、魔術の撃ち合いにおいては、かなり優位に立てるでしょう?』
キャスター『まあ、『対魔力』のことさえ考えなければ……』
詩織『元から最弱同士なんです! 相手のスキルは考慮に入れずにいきましょう! 魔術を使うときは目くらまし程度に考えて、とにかく手数で圧倒しつつ、逃げる算段を整えるんですよ!効くとか効かないとか二の次! 大丈夫、『杯』を見つけだせれば勝ちなんですから、これでなんとかなりますよ!』
キャスター『なんとか、なるかしら……?』
詩織『なります! きっと――』
キャスター『きっと!?』
詩織『いえいえいえいえ! そっちにつけた『きっと』じゃありませんよ! えっと、ですね。きっと皆、探すよりも戦うことを優先すると思うんです。だから、私たちは可能な限り逃げ回って、潰し合ってくれるのを期待しましょう!』
キャスター『そうね、それなら勝機は……』
詩織『最後の一人となら、消耗の度合い的に見て、正面から戦ってもなんとかなるでしょうし!』
キャスター『勝機、あるのかしら……』
詩織『ありますって! あとは『宝具』です! この逃げ回る作戦に適した宝具があるのなら――」
キャスター『あ、私の宝具はそういう類のものじゃないの。『魔に呑まれる者の儚き抵抗(デモン・キル・カウンター)』といってね、相手から食らったダメージから算出して、それの数倍の威力の魔力弾を――』
詩織『相手の攻撃を食らうことが前提の宝具なんですか!? 逃げ回るのが作戦の肝なのに!?』
キャスター『ごめんなさいごめんなさい! こんな宝具でごめんなさい! 近接戦闘になったとき、役に立つんじゃないかと……!』
詩織『でもそれ、相手の一撃を耐えられる耐久がないと意味がない宝具じゃないですか! ……あ! もしかして、その宝具を使っている間は、耐久がランクアップするとか――』
キャスター『いえ、そういうことは全然』
詩織『じゃ、じゃあ『対魔力』を無視してダメージを与えられる、とか、そういう効果が……!』
キャスター『いえ、それもまったく。普通に『対魔力』で軽減されちゃうわ……』
詩織『…………』
キャスター『……ああっ! いま、『使えない奴』って!』
詩織『言ってません! 言ってませんから! と、とにかく……。宝具のことは、考えないことにしましょう』
キャスター『えっ!? まさかの宝具不使用宣言!?』
詩織『だって、宝具を使おうと躍起になって、一撃食らってはい退場、なんてなりたくないじゃないですか! そうなる危険を考えれば、宝具は敢えて使わない方向でいくべきですよ!』
キャスター『うう……、わかったわ。まさかの『宝具のないサーヴァント』になっちゃったのね、私……』
詩織『ないんじゃありません、使わないだけです。もしかしたら、イチかバチかで使う場面に出くわすかもしれませんし。とりあえず、この作戦でいきますけど、いいですね?』
キャスター『わかったわ……。最弱だけど、最後まで見捨てないでね、マスター』
詩織『こちらこそ、おそらくは最弱のマスターでしょうけど、よろしくお願いします』
イリス「そろそろいいかしら?」
詩織「あ、はいっ! オッケーです!」
シリウス「じゃあ、これで全員がサーヴァントを呼び終わったな。ではいよいよ――」
???「ちょおっと待ったあーーーっ!」
シリウス「なっ、なんだ!?」
大河「礼拝堂の扉がいきなり蹴破られた!?」
守「うおっ! 外の光が目に眩しいっ!」
千夏「逆光で顔が見えないけど、あの人は……?」
美鈴「おい、詩織。あいつは……」
詩織「ええ、副部長。あの人は、間違いなく……」
???「アタシを仲間外れにして、な〜にを楽しそうなことをやってるのかな〜?」
美鈴「……やっぱり、あんたか」
???「おう、アタシだっ! 第一演劇部の部長こと施羽深空、見参!」
詩織「部長……」
深空「さあ、なにをやっていたのか、説明してもらおうか、二人とも!」
シリウス「いや〜、それはちょっと……」
イリス「もう定員だから、ね?」
美鈴「いや、それがだな」
詩織「かくかくしかじか、というわけでして」
深空「なに〜っ!? 面白そうじゃないか! よし、じゃあアタシも!」
イリス「だから定員……!」
シリウス「まあ、なにも召喚されないだろうからいいけどな……。ほら、端末機」
イリス「ちょっと、シリウス! ……でもまあ、そうね。気が済むまでやってもらいましょうか……」
深空「サンキュ! ――さて、暗黒の彼方より来たれ、我がサーヴァント。異界たるこの地へとその魂を繋げ、現界せよ!!」
シリウス「…………。ん、来ないな、やっぱり」
イリス「そのようね。まあ、どんなときにも『例外』はあるから、ちょっとだけ焦っちゃったけど。いや、私としたことが――」
――ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!
シリウス&イリス『嘘っ!?』
深空「おっしゃ、来たな! 能力は『筋力A 耐久A+ 敏捷A 魔力B+ 幸運A+』! おっ、なんかいい感じ?」
シリウス「めっちゃ高ランクなサーヴァント、キターーーッ!」
イリス「お、お、落ち着いて、シリウス! キャラが変わっちゃってるわよ!」
シリウス「キャラが変わりもするさ! だって、信じられないだろ、あの『能力』!」
イリス「う、まあね。ちょっと悪夢よね……」
???「呼ばれていきなり、存在そのものを『悪夢』とか言われちゃってるよ、僕……。能力を褒められてはいるはずなのに、なぜだろう、ちょっとショックだ」
深空「『残り物には福がある』ってやつだね! で、あんたはどこの誰?」
???「どこの誰って……。名乗れと? 僕に真名をここで名乗れと? とりあえず携帯端末機を見てみてくれないか? マスター」
深空「りょーかい」
○深空のサーヴァント
クラス:モンスター
マスター:施羽深空
真名:???
宝具:???
能力:筋力A 耐久A+ 敏捷A 魔力B+ 幸運A+
スキル
・黒き魂〔A〕
スキルというよりも、彼が生まれつき持っていた能力、あるいは『破壊衝動』という名の呪い。
使用すると『天上存在』と同等の『力』を発揮することが可能となる。
能力面では、魔力が〔A〕に、それ以外が〔EX〕に上昇する上、スキル『絶対領域〔EX〕』が自動で発動したり、『黒き魂の力・滅』と『黒き魂の力・殺』を使用できるようになる。
しかしランクが〔A〕であるため、使用中は集中力などの問題から、『魔術』や黒き魂の力を利用したもの以外の『技』は使用できなくなってしまう。
それだけではなく、スキルの使用持続時間自体も三分間しかなく、再度このスキルを使用するには、一時間ほどの休憩が必要。
また、三分を超えてこのスキルを持続させた場合は、視界に入るものすべて(マスター含む)を破壊することしか考えられない、文字通りの『怪物』になってしまう。
・絶対領域〔EX〕
『黒き魂〔A〕』を使用している間のみ連動して発動するスキル。
『黒き魂〔A〕』を使用した状態の彼を中心に、半径二メートルにわたって『世界に自分の存在の存続を最優先させる結界』が展開する。
この結界内にいる限り、彼が望まなければ、彼に『死』が訪れることはもちろん、『怪我』をすることすらない。
『黒き魂〔A〕』と合わせて、反則と呼んでいいスキルだろう。
・善性〔A〕
善人であることの証。
これが〔A〕である者は『第五階層世界』の上段階に心が通じており、センスさえあれば、いつ<通心波(テレパシー)>が使えるようになっても不思議ではない。
なお、どうやら彼はすでに問題なく使いこなせる様子。
そして、それとは別の意味において、彼にとっては必須のスキル。
というのも、彼はこのスキルをもって『黒き魂〔A〕』の暴走を抑えているからである(もっとも、三分が限界ではあるが)。
・人物解説
怪物のサーヴァント。
剣術と体術、魔術を一流レベルまで修めており、それらを組み合わせて戦う。
また、三分間のみなら『黒き魂〔A〕』とそれに伴うスキルを使用することで、戦闘時、圧倒的な優位に立つことも可能。もっとも、三分間が過ぎ、体力を消耗した状態で『黒き魂〔A〕』を解いた瞬間、一気に劣勢に立たされる危険性も孕んでいる。
元いた世界では『大賢者』とまで呼ばれていたが、しかし、とある魔術の組み立てに成功し、それを使用した瞬間に行方不明者として扱われることになった。
彼自身はその後、彼が元いた世界からも『異世界』とされる地に『世界移動』し、その地の『ディリトリシア王国』に滞在。自身の能力の弱体化と引き換えに、『リーゼンフォード』の姓と約五割の確率で当たる『未来視』の能力を手に入れる。
ただし、今回の『聖杯戦争』では『元いた世界』に近い世界に召喚されたためか、能力は弱体化する前のものに戻っており、『リーゼンフォード』の姓と『未来視』は失われている様子。
なお、今回は『モンスター』という特殊クラスで呼ばれたが、実は『セイバー』を始め、『キャスター』、『アサシン』、『バーサーカー』と、非常に多くのクラスの適正を満たしている。
深空「ほえ〜……。これは、優勝狙えちゃうかな?」
モンスター「僕という人間自体は、決して戦闘を好む性格をしてないんだけどね。これ大事」
深空「明らかに近接戦闘向きのスキルを持っているのに? クラス名、『モンスター』なのに?」
モンスター「スキルは生まれつきのもの。クラス名は、たまたま適正があったってだけ。僕の意思とはあまり関係ないんだよ」
深空「ふうん……。まあ、いいや。で、あんたは結局、誰なの?」
モンスター「え、まだ訊く? ……そうだなぁ。とりあえず、わからない人は『不思議の国のお祭り事情』の『彼女のためだけに動く彼は、穏やかさと激しさを併せ持つ人だった』と『波紋の広がることのない、けれど波ある心を持っていたいと彼女は願う』を読んでみてくれ」
ライダー「すごい宣伝……」
モンスター「口頭で説明するより、このほうが早いんだよ。……ところで、ちょっといいか? マスター」
深空「ん? なに? ……ああ、内緒話モードね。了解了解」
モンスター『で、だ。確かに僕のスキルには戦闘向きのものが多いんだけど、デメリットも多い。そこをちゃんと把握してほしいんだ』
深空『デメリットって、この『体力を消耗した状態で『黒き魂〔A〕』を解いた瞬間、一気に劣勢に立たされる危険性も〜』ってやつ?』
モンスター『そう、まずはそれ。『黒き魂〔A〕』は最初の三分間しか正気を保っていられない上、とにかく無茶な動きをしまくるからさ、普段よりも体力の消耗が早くなるんだ。だから、できることなら二分くらいをタイムリミットにしておきたい』
深空『余裕を持って戦いたいってことね。了解』
モンスター『あとは『黒き魂〔A〕』の使用中は、『魔術』と『技』を使えなくなるってことかな。あ、『滅』と『殺』は別だけど。――あと戦術は……まあ、基本は力押しでいけると思う。それじゃ駄目そうな状況に陥ったら、そのときに応じて、僕のほうでも考えるから。……あ、そうそう、『黒き魂〔A〕』を使ってる最中は、一人称が『僕』から『俺』になったり、引かれかねないくらい荒々しい口調になったりするけど、そこは直したくても直せないところだから、勘弁な』
深空『荒々しく? それって……』
バーサーカー「――アーッ……アーッ……! アァァァァーッ!!」
守「うわっ、どうしたバーサーカー! ちょ、落ち着け! もう少し待て! もうちょっとしたら始まるだろうから!」
深空『……あんな感じ?』
モンスター『いや、さすがにあそこまで荒々しくは……というか、あれって『荒々しい』って表現していいのか? ただ単に理性ぶっ飛んでるだけだろ……?』
深空『あはは、そうみたいね。ともあれ、ああならないんなら全然問題なし、と! さて、あとは……『宝具』?』
モンスター『だな。宝具。俺のは『黒き魂の力・殺』だ。どこでもいいから、相手の身体を掴んで、そこから『黒き魂〔A〕』の『力』を相手の『内側』に直接、叩き込む。でも『黒き魂〔A〕』を使ってるときにしか使用できない宝具だから、そこは注意な?」
深空『オッケー! じゃあ、あとは戦って、『杯』を手に入れるだけだね!』
モンスター『ああ。『杯』をとっとと手に入れて、カナデのところに一刻も早く帰るだけだ』
深空『カナデ? 誰それ?』
モンスター『僕の婚約者』
深空『あははっ! サラッと言うねぇ!』
モンスター『嘘つく意味がないからね。さ、もうこんなもんでいいだろ?』
深空『おりょ? 内緒話モード終了?』
モンスター『ああ』
深空「了解。お〜い、内緒話、終わったよ〜」
シリウス「じゃあ、今度こそ始めようか。ところで、『了解』ってなに?」
深空「あははっ。こっちの話」
シリウス「ふうん……。さて、じゃあ皆には一斉にここを出てもらうとしようか」
セイバー「『杯』ってのを一番最初に見つけた奴が勝ちなんだよな?」
イリス「ええ。じゃあ――」
フィアリス「スタートじゃ!」
――シリウス、イリス、フィアリスを置き去りにして一斉に駆け出す十六人。
シリウス「…………。さて、全員行ったかな?」
フィアリス「まさか、この周辺に残ってはおらんじゃろう。あの勢いからすれば、な」
イリス「じゃあ、そろそろ……」(言って、シリウスに携帯端末機を差し出す)
シリウス「ああ、始めようか。俺とイリスにとっては『遊び』ではない『聖杯戦争』を」
イリス「ええ。……ごめんね、『座談会』でまで、事件に巻き込んじゃって」
シリウス「気にするな。俺は気にしてないから。それに……イリスが『七つの世界を翔ける杯(カーツア・アーク)』を手に入れないと、この学園が維持できなくなるんだろ?」
イリス「正確には、サーヴァントたちのぶつかり合いから生じる『力』を取り込んだ『杯』に『学園の維持』を願わないと、だけどね」
シリウス「つまりは、そう願ってくれさえすれば、誰が『杯』を手に入れてもかまわない、と」
イリス「まあ、ね……。シリウスには悪いけど」
シリウス「悪いなんてことはないさ。ただ……『力』が満たされさえすれば『アヴァロン』にだって行けるようになる『七つの世界を翔ける杯(カーツア・アーク)』。ゆえに、人間が抱く望み程度ならなんでも叶えることのできる『万能の願望機』……。もしも他のマスターたちがそれを知っても、『学園の維持』なんて、ちっぽけなことを願ってくれはしないだろ。たとえ、正直にそう頼んでも、な」
イリス「それには、ちょっと反論したい気もするけど、それは無理、か。『学園の維持』を間違いなく願ってくれる人間は、と考えたとき、シリウス以外の顔が思い浮かばなかったのは事実だし」
シリウス「それは光栄。……幸い、一番最後に呼ばれた『モンスター』以外は、恐ろしく強いというレベルでもないしな。それに、俺のサーヴァントの情報は、スキルはおろか、『能力』や『クラス』すらもバレてない。大丈夫、あの『モンスター』ってサーヴァントにさえ警戒していれば、勝てるさ。幸い、あのモンスターだってランクが〔EX〕までいっている『能力』はなかったしな。まあ、各サーヴァントの保有スキルや真名、宝具まではわからずじまいだったが……。いや、セイバーの真名だけはわかってるか、俺にだけは」
フィアリス「まったく、本当に『中立』なのは実はわしだけじゃというのだから、正直、呆れてしまうわ。――この事実に、あやつらはいつ気がつくかの……」
シリウス「できるなら、最後まで気づかないでいてほしいところだな。『杯』が実は『万能の願望機』なんだってところまで含めて。まあ、サーヴァントたちにとっては周知の事実なんだから、マスターたちも皆、いずれは知ってしまうんだろうが。――さて、そろそろ俺たちも行くか、イリス」
イリス「ええ……!」
――ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!
○シリウスのサーヴァント
クラス:セイヴァー
マスター:シリウス・フィッツマイヤー
真名:イリスフィール・トリスト・アイセル
宝具:記憶封印(プロテクト・オブ・セピア)
能力:筋力B 耐久C+ 敏捷A 魔力EX 幸運A+
スキル
・対魔力〔A〕
魔術に対する抵抗力。
〔A〕のランクを持つ彼女は、精霊・精神魔術はもちろんのこと、『聖蒼の王(ラズライト)』と『漆黒の王(ブラック・スター)』、『界王(ワイズマン)』の力を借りた術でさえなければ、余裕で耐えきることができる。
・希術〔EX〕
魔術とは力の源が異なる術式。
主に生物の『善性』――端的に表すなら『愛』を力の源としている。
そのためか、攻撃系の術が少ない傾向にあるのが難点。
それと、魔術ではないため、『対魔力』によって効果を軽減されることがない。
・神性〔A+〕
創造主に近き者のみが持つスキル。
すべての神界術を使うことができるのはもちろんのこと、このランク――正確には〔A〕以上――にまでなると、『自分』という存在が力の源となる『術』が作られることもある(『イリスフィール』という神族の力を借りた神界術、という風に)。
ただし彼女はそれをさせず(『イリスフィール』という神族の存在を極力、物質界に知らせず)、魔術とは異なる術式――『希術』を学ぶ道を選んだ。
『希術』は文字通り、『希望をもたらす術』であり、創造主の力を借りた術であるともいえる。
世界には、それとは間逆の力――生物の『悪性』を力の源とする術式『鬼術』も存在するらしいのだが、果たして……?
・宝具:記憶封印(プロテクト・オブ・セピア)
彼女の使う『希術』のひとつ。
記憶を奪うのではなく、術をかけた対象の内側に記憶を封じ込める。
本来、『希術』には『呪文名』が存在しないのだが、それだとマスターが指示を出しにくいだろうと思い、便宜的に今回は彼女が『呪文名』を考えた。
それと、この宝具で封印した記憶はほぼ永遠に封じておける(ただし、なにかの拍子で思い出されてしまうこともある)とのことだが、現在はマスターの魔力に依存しているため、一時的に記憶を封じ、敵を前後不覚にさせる程度のことしかできない。
ちなみに今回、序盤でセイバーの真名を、彼のマスターである千夏(とシリウス)を除く皆に忘れてもらうためにこの宝具を使用しているが、あれだけは例外的に(いわゆる、大人の事情により)100%思い出されることがない。
・人物解説
救世主のサーヴァント。
本来は『第七階層世界』に住まう、『神格』を得た『天上存在』。異名は『時間(とき)を翔け、空間を律する存在(もの)』。
能力的に見た限りでは、『敏捷と魔力の高い運任せタイプ』と思われるが、スキル『希術〔EX〕』や宝具の特異さも合わさって、その実力は完全に未知数。
同じく『天上存在』である彼女の同僚――『空間に留まり、時間(とき)を御する存在(もの)』ことフィアリスフォール・アルスティーゼ・ド・ヴァリアステイル曰く、『素早く動いて蹴りを叩き込むのが得意』らしい。
『彩桜学園を維持するため』という、『座談会』にはあまりにも似合わない、真剣な理由をもってシリウス・フィッツマイヤーをマスターとして『聖杯戦争』に参戦。
というか、『聖杯戦争』のルールを(多々、改変してある部分はあるものの)こちらに流用し、開催したのは他ならぬ彼女である。
ちなみに、正規の手続きを踏んで参加した場合は『キャスター』として召喚される。
<あとがき>
まさか、座談会がここまで長くなろうとは(座談会で33000字って……)。そして、それにあとがきをつける日が来ようとは……。
ともあれ、今回は『Fate』風の座談会を書いてみましたが、いかがでしたでしょうか? 退屈ではありませんでしたか?
登場人数、全部で十九人。正直、途中から同じことの繰り返しをやってしまった感が拭えません。
ところで、今回登場した『能力』とか『スキル』とか『宝具』とか。
『宝具』だけは例外ですが、それ以外はすべて、基本、『スペリオルシリーズ』の公式設定としてしまってもかまわないくらいの気持ちで考えました。……まあ、解説文は全部、書きながら即興で考えましたので、『スペリオルシリーズ』と読み比べた際に矛盾が生じる可能性はありますが(汗)。
そうそう、『キャスター』の項に関しては、最後の最後まで『魔術師のサーヴァント』にするか、『魔道士のサーヴァント』にするか、それとも『魔法使いのサーヴァント』にするか迷いました。結局は、原作である『Fate』に従って『魔術師』にしましたが。
それと『法術師のサーヴァント』も最初は『ヒーラー』ではなく『ビショップ』か『クレリック』にする予定でした。でも最後が長音で終わるサーヴァントが多い中で、長音で終わらないオリジナルサーヴァントを出すのもなぁ、と急遽『ヒーラー』に変更。
そして、『ランサー』が出せなくてすみませんでした。や、『スペリオルシリーズ』にはいないのですよ、槍を使うキャラが。『ライダー』だってかなり苦し紛れな感じで出しましたし。
あ、あと『モンスター』と『セイヴァー』。この二名は『なんだこりゃ?』と思った方もいらっしゃることでしょう。この二つのクラスの元となっているのは『Fate/EXTRA』の隠しキャラである両儀式とラスボスの『セイヴァーさん』です。
どちらも『情報マトリクス』はなく、前者に至っては『クラス』としていいのかも不明だったのですが、『まあ、この座談会自体がネタの嵐だし』と勢いに任せて出しちゃいました(笑)。
さて、登場したサーヴァントは全部で九騎。そのうち『真名』を出さなかったのは七騎。
彼らの『真名』はわかっていただけましたでしょうか? 七騎とも、推測できるように書いたつもりではありますが、もしかしたらヒント不足になっている可能性もあるかもしれません。もしそうだったらすみません、と先に謝らせていただきます。
それと、今回は思いっきり『次回に続く!』みたいな感じに終わっておりますが、続きを書く予定はいまのところなかったりします。そもそも、座談会自体が『一発ネタ』みたいな側面を持っているので。
もちろん、それぞれのバトルを妄想することはあるんですけどね。このスキルはどの場面で使わせようか、とか。でもまあ、それを書くのは気が向いたときに、ということで。……や、反響の度合いによっては書くかもわかりませんが(苦笑)。
しかし、どのマスター&サーヴァントも自分的に非常に愛着があり、誰を一番最初に脱落させるか、とかを考えるのはなかなかに難しいのですよ。
でも、あれですよね。『モンスター』なんかは某慢心王みたいにコロっとやられちゃってもおかしくないですよね。や、油断して、みたいな意味合いで(笑)。
あとは、やっぱりマスターの采配にかかってくるのかなぁ。今回考えた『聖杯戦争』の設定上ではワーストワンの座を譲り合っている『キャスター』と『ヒーラー』ですけど、あまりにも最弱過ぎる上、マスターが一般人である『キャスター』は早々に脱落しちゃうのに、九恵をマスターに持つ『ヒーラー』は割と後半まで残っている、とか。
……ああ、やばい。こんなこと書いていたら、なんか続きも書きたくなってきた……!
そうそう、『七つの世界を翔ける杯(カーツア・アーク)』が『彩桜学園』にある、みたいな感じの設定は、元から考えていたものでした。それこそ、イリスというキャラと『彩桜学園』の暗部のことを考え始めたあたりから存在していた設定。
それが、上手い具合に『聖杯戦争』の『杯』に結びついてくれました。こういうのって、なんか嬉しいです。
さて、最後に。
ここまで読んでくださり、そしてこのブログとサイト『ルーラーの館』の小説にこれまでおつき合いくださって、本当にありがとうございました。おかげさまで、四周年を迎えることができましたよ。
そして……と、ここから先は本当は作中でキャラたちに言わせるつもりだったのですが、そういう展開を作り出せなかったので、いまここで。
皆さん、これからもこのブログと『ルーラーの館』をよろしくお願いします!
それでは。
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